学会通信 No. 44
2007年10月25日発行

 目次 


第31回総会・研究大会報告
第31回総会議事の報告

理事会議事録から
第32回総会・研究大会について
『イギリス哲学・思想事典』の刊行について
スマウト教授講演会
個人研究発表と論文公募のお知らせ
会員の動静
事務局より


 第31回総会・研究大会報告 

 日本イギリス哲学会第31回総会・研究大会は、2007年3月27日(火)・28日(水)の両日、京都の同志社大学今出川キャンパス寒梅館において開催された。 交通の便もよく、またキャンパスの素晴らしさもあって、136名と多くの参加者があった。会場校として、大会の準備の段階を含め、開催や運営にご尽力いただいた、 同志社大学の深田三徳会員、濱真一郎会員、戒能通弘会員に深くお礼を申し上げる次第である。

 第一日目午前中の総会では、寺中平治会長の挨拶、西澤由隆同志社大学法学部長による開催校挨拶があり、続いて議長に名古忠行会員が選出され、議事は滞りなく進み、 総会は無事終了した。次いで寺中平治会長による、「G.E.ムアと自然主義の誤謬」と題された会長講演が行なわれた。

 第一日目の午後は、シンポジウムTは「ジョン・スチュアート・ミル研究の現状と可能性―生誕200年と記念して―」という題で、本学会に相応しいテーマであった。 司会者として泉谷周三郎、有江大介の両会員、報告者として多胡智之、松井名津、成田和信の会員が各報告をされた。また特定質問者は、小田川大典、深貝保則の両会員が務められた。 フロアーからの発言も活発で、日本における今後のミル研究の方向を示唆するシンポジウムであったと思われる。

 二日目午前中の個人研究報告では、4人の会員による研究報告が、9時50分から12時まで、2会場に分かれて開かれた。今年度の研究報告は、新しい視点を求めての報告が多かった ように思われる。午後のシンポジウムUは、伊勢俊彦、冲永宜司両会員の司会の下に、「古典経験論と分析哲学」というテーマでなされた。報告者には、この方面の第一人者で あられる京都大学の冨田恭彦教授にもご参加いただき、次いで今村健一郎、久米暁の両会員の報告、さらにフロアーからの発言も含め、興味ある、活発な議論が展開された。


 第32回総会・研究大会について 


 次回第32回総会・研究大会は、2008年3月27日(木)・28日(金)の両日、帝京大学(八王子キャンパス)で開催されます。同大学には、冲永宜司理事が所属され、 大会世話人として大会開催に向けてご尽力いただいております。
 第一日目には、総会、記念講演(春日 喬)、シンポジウムT「イングランド−スコットランド合同のインパクト−合同300周年記念―」 (司会者:田中秀夫、松園 伸、報告者:富田理恵、篠原 久、犬塚 元)、懇親会が、第二日目には、個人研究報告、シンポジウムU「言語行為論の再検討」 (司会者:一ノ瀬正樹、成田和信、報告者:森 達也、伊勢俊彦、山田友幸)が予定されています。
 会場、参加申込等の詳しい内容は、2月のプログラム送付の際にご案内いたします。



 『イギリス哲学・思想事典』の刊行について


 
学会設立30周年記念事業の一つである『イギリス哲学・思想事典』が、予定通り2007年10月下旬に研究社より刊行されることになりました。 事項篇(183項目)、人名篇(371名)、索引(事項・人名・書名)の3部構成で、総頁数は約800頁です。
 2004年11月の理事会で企画が了承されてから3年で刊行に至ることができましたのも、会員の皆様のご理解とご協力によるものと存じます。 厚く御礼申し上げます。とくに、執筆者の皆様には、執筆や校正はもちろん、字句の統一や索引の作成に関して多大なご協力を賜り、誠に有難うございました。



スマウト教授講演会


 本学会共催の「スマウト教授講演会」が9月15日(土)午後2時から5時まで、京都大学経済学研究科(法経総合研究棟2階)201演習室にて行われた。 講師のスマウト教授Prof T.Christopher Smoutは10年前にも京都大学で講演を行っている。今回の主題は、今年300年を迎えた合邦(合同)で、 「イングランドと合邦したスコットランド―1800年から現在まで」Scotland Union with England, 1800 to the Presentというものであった。 2世紀あまりを鳥瞰した講演は、「ブリティッシュネス」から始まり、盛りだくさんな論点を持っていたが、近年のスコットランドのナショナリズムについての分析や、 イングランドのスコットランドからの分離論を予想するといった議論は特に興味をひいた。合邦体制と帝国へのスコットランドの貢献も大きいけれども、それほど 合邦からスコットランド得ている利益もまた大きいという。
 教授は現在、Emeritus Professor of St Andrews University;Historiographer Royal in Scotlandとして、講演などに招かれることも多いが、 悠々と研究を楽しんでいるとのことであった。参加者は25名で、半数は学会の会員であった。講演会のあとに懇親会も盛会で有意義であった。       (田中秀夫・京都大学経済研究科)


Professor Chris Smout is Scotland's most celebrated historian, and Historiographer Royal. He first taught in Scotland in 1959 when he joined the newly-formed department of Economic History at Edinburgh as assistant lecturer. He remained there, eventually becoming Professor of Economic History, until 1980, when he moved to the chair of Scottish History at St Andrews, starting a new department. He retired from teaching in 2000. His best known contributions have been to social history, notably The History of the Scottish People (1969) and The Century of the Scottish People (1986). He has also written extensively on demographic history and many aspects of economic history. Since the mid-1990s, he has developed the new discipline of environmental history in Scotland, giving the Ford Lectures in Oxford in 1999, published under the title of Nature Contested, Environmental History in Scotland and Northern England since 1600. His most recent publications in this field have been in woodland history. He served for 14 years on the Royal Commission on the Ancient and Historical Monuments of Scotland, and he has been a member of the Royal Commission on Historical Manuscripts, of the Trustees of the National Museums of Scotland and of the board of Scottish Natural Heritage, where he was deputy chairman. He has lectured in China, Japan, USA, Canada and Australia.
出典 http://www.dundee.ac.uk/history/UnionConference/




 個人研究発表と論文の公募 


各種の公募は、毎年、以下の様におこなわれます。希望者は下記の要領で期日までに申し込んでください。但し、事情により変更の場合もありますので、直前にご確認ください。

(A) 各部会研究例会報告
申込締切 各部会研究例会の2ヶ月前
報告時間 60分
申込先  各部会担当理事または事務局
 *2006−2007年度部会担当理事
  関東:中釜浩一、山岡龍一
  関西:伊勢俊彦、桜井徹
  九州:関口正司

(B) 研究大会個人研究発表
申込締切 9月15日(消印有効)
発表時間 40分、質疑応答15分
レジュメ 1600字以内、英語の場合は390ワード以内
申込先  事務局

(C) 『イギリス哲学研究』掲載論文
申込締切 9月10日(消印有効)
申込方法 邦文の場合は完成原稿(400字詰め原稿用紙40〜50枚相当)、英文の場合は完成原稿(5,900〜7,300ワード)と、英文アブストラクト(別紙に100語以内)を事務局に送付 ※


※ 応募論文原稿は、原則としてワープロ・ソフトで作成し、印刷されたものを3部提出してください。そのうちの1部には投稿者名を記載し、残りの2部については投稿者名を記載せず、本文や註に投稿者名が判明するような表現も削除してください。
なお、投稿論文は返却いたしませんので、あらかじめご了承ください。
また、審査の結果、掲載が決定した論文については、追って、フロッピー・ディスクでの入稿を求めますので、電子ファイルの保存をお願いいたします。
応募論文の審査は以下のように行われています。応募論文は、匿名の査読者2名により審査されます。査読者は、編集委員会が編集委員を除く会員のなかから選出し、応募者名を伏せて秘密厳守のうえ依頼しています。よって、応募者名、論文名、査読者名は、編集委員会と事務局以外には非公開となっています。
また編集委員は、応募者にも査読者にもなれません。採否は査読者の審査結果によりますが、理事会において掲載論文を決定後、投稿者に連絡いたします。



 会員の動静 


入退会承認後会員数      
正会員 401名
名誉会員 15名
賛助会員 6法人
計 416名・6法人



 事務局より 


本学会のHP上の記載事項について
 HP中の記載事項に関して誤植や間違いを発見された方は、事務局にお知らせください。 特に『イギリス哲学研究』の最新号やバックナンバーの目次の記入に関して、論文執筆者ご本人に確認していただければありがたく存じます。

会費納入のお願い       
 2007年度分までの会費未納の方は、1月末までに振り込みをお願いいたします。会費は一律6,000円です。
 なお今回の会費請求で、2年間未納の方については、学会誌の送付を停止いたします。さらに5年間滞納の場合は、自然退会となりますので御注意ください。


編集後記
 本学会の学会誌の特徴の一つとして、書評の数が多いことがあげられよう。しかも原則2頁もスペースが与えられているので、読み応えがあるものが多い。 現在編集中の第31号にも、こっそりお知らせすれば、和書13冊、翻訳書2冊、洋書9冊掲載予定と聞いている。そのうち和書に関しては書評対象は出版社に寄贈をお願いして、 評者に贈呈している。だが洋書に関しては何となく敷居が高い感じがしてこれまで同じようにはしてこなかった。自前で購入していいただいていたわけである。 さすがにこれは悪いと田中前会長のご提案とご協力により、思い切って今回海外の出版社に寄贈を募ってみた。結果は思ったよりもうまくいった。 Oxford、Cambridege、Harvard、Olmsからは、学会誌をサンプルとして送るようにという条件付ながら、気持ちよく寄贈してもらえた。特にCambridgeからは何と4冊もである。 何でもやってみる価値はあるものである。その際HPを見たいという要請もあったので、少なくとも一部は英文化することが急務であろう。
 尚、会員の方から、書評対象図書や 評者の決定プロセスに関してご質問が以前にあったので、この場を借りてお答えしておきたい。通常は7月期の理事会の前に理事諸氏にアンケートを送って書評候補図書を 推薦してもらい、編集委員会で図書と評者の候補を決めた上で最終的に理事会で決定することになっている。だから会員の中でこれを書評してほしいという要望がある場合には、 理事のどなたかにまずアプローチしていただくのがよいと思われる。
 今回寄稿して下さった方々、編集に協力していただいた方々に感謝申し上げます。 また掲載記事に誤りがあった場合にはお知らせくだされば幸いです。





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